おとくな話

 65歳の男性。64歳10ヶ月で会社をやめ、65歳の誕生日の2日後にハローワークに求職の申し込みをしたという。通常65歳過ぎた求職申し込みは、一時金給付のため、年金が支給停止になることはない。ただ、65歳の誕生月に求職申し込みをすると、なぜかハローワークは65歳未満の人と同じ失業給付を支給するのだ。そして、貰うほうは65歳になっているので、老齢年金支給停止事由に該当しない。
 65歳までの定年引上げが常態化すれば、このハローワークの対応も変わるかもしれないが、現時点ではこんなおいしい話はない。
 障害や遺族年金の受給権を持っている人は、失業保険を受けている間は、老齢年金に切り替えず、年金と失業給付を併給すると言うのは、よくあるパターン。ついでに言えば、在職老齢年金も老齢厚生年金のみが対象だから、障害や遺族は年金を減額されることはない。
 今の政府が目指しているのは、70歳まで現役続行の社会作り。となれば、雇用保険も64歳になった年の4月から保険料徴収がなくなるという現在の方式も改まる恐れがある。でも今、64歳の人たちはとりあえず、このおいしい話を逃すことなく、65歳の誕生月に求職申し込みしたほうがいい。

長期特例の人

 某有名企業の工場で15歳から46年間働き続けた男性。「61歳になったし、そろそろ辞めようかどうしようか迷っている。」との相談。長期加入者の特例で、60歳から定額部分が貰え、配偶者加給もつくはずなのに、働いているせいで年金は支給停止になっている。この会社では再雇用も正社員と同様で、社会保険加入が義務付けられている。もっとも、新規入社に関しては、非正規社員しか採らないみたいだが。 相談者の年金の月額を示し、これと今の給料とどちらを選ぶかと聞けば、やはり今の給料との答え。ならば、あと⒈・2年会社がいてくれと言うなら、働いてもいいんじゃないのと、私も即答。もっとも「こんなに長く働いて、もう疲れたと感じたらやめたほうがいいかも」とも付け加えた。働くことは苦にならない、元気だから家にいる気にもならない等々、優等生のご返事。こういう人はまれです。
 「年金は出ないけど、この年金が社会福祉に貢献してると思ってください。」なんて、言ったら、「そうだね。元気だから、そういうこともできるんだよね。」と言い残して帰っていった。
 俺の支払った分をなぜ返さないのかと、怒鳴り込んでくる人もいると言うのに、この相談者は、本当に善意の人でした。

ロストジェネレーション

 今25歳から35歳までの世代を、ロストジェネレーションというそうな。不況の影響で就職が難しかった世代なんだそうだ。私の世代もそんな感じだった。大学受験は、安田講堂の攻防戦が繰り広げられ、東大入試が中止になって、受験戦線は混乱。大学時代は、人によっては最後の学園封鎖で授業もろくに受けられず、挙句はオイルショックで就職難が言われた世代。でも、世間が言うほど、大変さは感じなかった。というか、まだまだ、就職に血道を上げる時代じゃなかったし、実学的なものへの嫌悪感も残っていたし・・・
 このロストジェネレーション世代のアンケートが新聞に載っていて、結構前向き積極的に自分の将来を見ている様子が窺えた。でも、健康な若者なら,どの世代だってきっと同じ結果になるはず。誰だって若いときに自分が動けなくなり、収入の道が断たれる事態を想像することは難しいのだから。自分の責任で何とかすると考えるのが当然。彼らの元気とやる気を生かせるように、政治家は考えなくてはならない。
 話変わって、年が明けてからいよいよ離婚分割の相談が増えてきた。あと3ヶ月。早く概算を出してもらって安心して離婚調停に臨みたいというところか。
 20年以上タクシードライバーをしていると言う女性。「こんなに働いてるのに、これっぽちの年金なの」と一言。平均標準報酬が,20万円台だから、とも言えず返答に窮する。いま50代の働き続けた女性たちも、第3号になれず、振替加算もつかず、結局は割を食っているのです。

年の初めに

 2007年問題と言われた年が始まった。団塊世代の大量退職は、この国をどう変えていくだろう。まだまだ元気な彼らは、若者に負けないと思い込んでる人もいるし、人を使う立場から使われる立場に変わって、自らの老いを実感するか、はたまた起業してまめまめしく働くか。第2の人生は期間限定の分、選択が難しいと思う。
 ただ、昔、学生時代に燃やした政治への熱い思いを、あのときの挫折とともに捨て去るのは惜しい。学園紛争で勉強しなかった世代だからこそ、今じっくり勉強することもできるんじゃないだろうか。青臭かった理論も、いまなら熟成できるはず。
 かく言う私も、今年はもう一段階高いところからものを考えたい。年金や福祉を、どういう方向に持っていくかは、国家としてのあり方にかかわる。行政改革・小さな政府と言う言葉の裏には、非福祉国家を目指すと言う意味が隠されているのだと言うことを、どれだけの人が知っているのだろうか。
 今年は、社会保障について勉強する年にしたい。そのために何をすればいいか、専門職大学院に入学するか、独学で学ぶか、去年の暮れから思い悩んでいる。

後輩との出会い

 母親と娘が、年金相談に来た。着ている物も高そうだし、ちょっと場違いな感じ。どんな相談かと聞けば、障害年金だと言う。娘が、精神を患っているとか。でも、娘は、40代後半とは思えないほど若々しいし、生活の苦労も感じさせない。ただ、顔立ちはきれいなのに、かまうことは好きじゃないようで、化粧もとりあえずつけただけという感じ。年金は払ったことがないと母親が言う。ちょっと二の句がつげず・・
 よく聞けば、大学生のときの初診日だと言う。とりあえず、保険料の納付要件を確認。就職したのは、わずか6ヶ月。厚生年金6ヶ月以外に、保険料を納めた形跡はない。今は、母親の遺族年金と遺産で生活しているのだと言う。私が死んだらこの子はどうなるのかと、心配する母親が娘を連れてきたようだ。
 よくよく話を聞けば、娘は大学の後輩に当たる。幼稚園からずっと大学まで、同じ学校で育った典型的なお嬢様。私の在学中にも、精神を病んで来なくなってしまったり、自殺したりする子はいたけど、この人は、完璧に出席し、常にトップの成績をとっていたと言う。父方の遺伝だと本人は言うが、何かトラウマになることが、大学生のころにあったのだろうか。
 学生が、任意加入だった時代に、初診日がある障害は、保険料納付要件を満たさなくても、障害給付金が出るようになった、月額5万円だが。
とりあえず、彼女にはこの話をし、初診日を特定し、そのときの状況を証明できるかどうか、病院に問い合わせて、できるようなら市役所に行って手続きするように言う。大昔のことなので、かなり難しいだろう。でも、現実に保険料を払っていない以上それ以上のことはできない。

年金一元化パート2

 共済の情報は社会保険庁には入ってこない。だから、共済の人の年金額は、社会保険事務所では計算できないし、配偶者が共済なら、離婚分割のご相談にも応じられない。なぜなら、配偶者の報酬額がまったくわからないから。
 配偶者加給が過払いになって、返還を求められるケースは、だいたいがこの共済と厚生年金の長期加入者の夫婦。妻が年下で、夫が60歳のとき、厚生年金の手続きをする。定額部分が発生するとき配偶者加給ももらえるようになる。この時点で妻が共済の退職年金を貰っていなければ当然配偶者加給はつく。しかし、妻が年金をもらえるようになった段階で、夫はこの配偶者加給を支払停止するように申し出る必要がある。それを怠れば、配偶者加給は支給され続け、妻が65歳になるまで過払いが続く。共済加入者も、65歳になれば基礎年金の請求に来るから、この時点で過払いが発覚すると言うパターン。返してくれと言うと、100パーセントの人が怒り出す。でも、これは、社会保険庁のせいではなく、申し出なかった当人の責任。
 年金証書が送られるとき、冊子が同封されていて、その冊子には、大事なことがいろいろ書いてある。その中に、この申出のことも書いてあるのだが、当人たちは、もらえるものは何でも貰おうというだけだから、冊子なんか読みもせず、振込み日を待つのみ。そして、すでに使ってしまったものを、あとになって返せと言われて怒り出す。
 気持ちはわかるけど、自分の非も認めないと・・・
 共済との一元化は、こんな過払い防止にも役立つことは確実。

年金一元化

 2年後に年金の一元化を目指すと言う政府案。要は、年金の原資を共済から貰おうということなのかどうか、本意はわからないが、共済だって資金が麗澤というほどではないだろう。ことに私学共済は、ジリ貧のはず。早稲田は、とっくにそんなところを出て、私学なのになんと厚生年金。教員の給料も高いし、福利厚生も厚待遇の職場だ。教授の奥様たちも、おおむね上品できれいにしている。
 この前,元教授夫人という女性が自分の国民年金の請求に来た。今は、介護の仕事をしているというが、あまり生活に苦労している感じはない。話によれば、別れた亭主は、太宰治を信奉するがごとき無頼派で、女を作って家を出たりしていたらしい。「世間知らずだから、馬鹿にされていたのよね。」と彼女。でも今は、人のための仕事ができて充実した生活だと言う。
 いまどきこんな男がいるのか、と驚くような男もいる。妻はあくまで従属物で、一人の人間と見ていない男性。「こいつにも年金が出るんですか」なんていうような男は・・・論外。
 年金一元化は、こんな時代錯誤の男に男女平等を教え込むくらい難しいことなのです。