法令順守か道義的責任か

 やたらと談合だ、いじめだと喧しい昨今。根は「美しくない国」にあることは確かだが、じゃあ愛国心を植えつけたら美しくなるかと言うほど、簡単ではなさそうだ。
 法令を守る、というがこんなことは当たり前で、公務員の仕事はここで成り立っている。それが、結果として間違っているとされるのは、彼らがお役所仕事の書類作成に明け暮れているから。形を整え、添付書類さえ揃えれば1件落着の世界にいるから。それを逆手に取れば、書類さえ揃えれば法律的に問題なくことが進むと考えているから。公務員だけでなく、会社も同じじゃないかと言う気がする。65歳まで雇用しなければならないとなれば、就業規則にそれを載せれば、監督署はOK。働き続ける人たちの思いとは別のところで形式だけが進んでいく。だから、大人も子供もストレスがたまるんだよね。
 昭和26年生まれの男性。一度リストラされたのだろう。最近の報酬額は、いわゆる「ワーキングプア」。この世代の男性は、もう60台前半は、報酬比例分が支払われるだけだから、このままずっと働き続けるしかない。話してるうちに夕張市の話になって、「あんなのはそこらじゅうの自治体が同じなんじゃないの」と男性。「国がパンクすれば、この年金もパーになるな」とため息をついて帰っていった。そういう不安を掻き立てるところが、今の日本の現実か。会社の経営者たちに「ビジョン」を説く前に、有名経営コンサルタントの諸氏は、国の政治家に物申すべきではないのか。せめて5年後、10年後の経営計画を出してくれないと、一般人は滅入るばかりです。
 政治家が「情」というと、うさんくさいけど、政治家が本当の「情」を見せてくれたら、この国は少しは救われるのではないかしら。

社保庁の解体

 2年後には、民営化されるはずだった社会保険庁が、3つに解体されるそうだ。年金相談は、民間にまかされるそうな。でも、誰がお金を払うんだろう。民間業務なら、当然年金相談は有料でなくては仕事にならない。金融機関が顧客獲得のために、無料で開設するのか。でも、肝心のデータは、非公務員の新たな行政独立法人が持つことになるので、利益を考えたら、このデータは、無料で利用できるはずもないだろう。というか、社会保険庁は、売り物になるのは、このデータしかないのだから、データ利用を、有料化することでしか民営化の意味はない。
 すべてを国がやっていたから、いろいろなことがただで利用できたので、民営化されたら、自分の年金請求は、基本的には、自分ひとりでやることになるのか。ひとりで書類を書き、添付書類を揃え、郵送して・・・こんなことだって、できない大人は結構多いんだけど。相談に来た人に、次回は、こことここを記入してきて、なんて鉛筆で印をつけてあげたって、実際に書いてくる人なんてほとんどいない。こんな状態で、どんな事態がおこるのか。裁定請求書の書き方セミナーでも開こうかな。

年金相談にも疲れてきた

 先週の土曜日は、文京区のボランティア祭りで、私の所属しているNPOが、労働相談と年金相談のブースを持つので、年金のお手伝い。でも、来る人は、すでに年金を貰っている人が多いし、ましてや労働していない人が多いので、ヒマったらない。精神障害者NPOのブースに行って、営業してみたが、すでに大半が受給済み。見事に空振りに終わった。
 このところ、社労士本来の仕事があって、年金相談の方に、頭が向いていなかった。というのも今月は、建設業者の入札資格の審査月で、県は、入札の加点項目にとして、子育て支援策を提示。行動計画を出したら5点。就業規則を変えて、子育て支援に関する規定を作れば5点と言う具合。公共事業頼みの土建業としては、やらざるを得なかった。というので、私にも話が来て、今月6日に会社に行き過去の就業規則を預かり、県庁に言って話を聞き、そのとき出てきた建設業課の人は、今月末が締め切りだと明言したので、急いで就業規則を変更し、規定を作り、行動計画を作った。
 13日に雇用均等室と労働基準監督署に提出し、受付印を貰い、14日に県庁に受領印つきの、各書類を送付。これで10点ゲット、と思いきや、依頼のあった会社は、すでに締め切りをすぎているから受け付けられないと、県庁の建設業課。何でもアイウエオ順で、書類を受け付けているそうだが、これってサギ同然。何のためにここまでしたのかわからない。子育て支援を担当している課と、建設業課の意識の違いを見せ付けられた。公共事業の入札を盾にして、彼らは言いたい放題、やりたい放題。ただでさえ不況にあえぐ業者に、余計な負担をさせて、まったく悪代官もいいところ。それでもお役人様に、文句を言ったら自らの首を絞めることになる業者は、時代劇の水呑み百姓同然、ただ耐えるしかないのか。「たまたま担当した人が悪かったんだよ」と、事業主に慰められている悲しい社労士でした。

通勤災害の遺族年金

 息子が、通勤途中に交通事故で死んだ母親。甥が弁護士をしているとかで、書類をきちんとそろえてやってきた。労働基準局のほうには、もう書類は提出ずみという。厚生年金のほうも、第3者による死亡は、念書やら事故状況証明書やら、手続きは複雑だ。
 でも、この母親は、もう60歳をすぎていて自分の老齢年金を受給している人。それなら、労災の遺族年金と、自分の老齢を貰ったほうがずっと得ではないか。なぜ厚生年金の遺族を請求に来たのか納得できない。労働基準局がそうさせるのだと言う話も聞いたが、受給選択の際に、業務センターは、ちゃんと配慮をしてくれるだろうか。

高次脳機能障害

 数日前に来た夫婦。夫が、2年前にくも膜下で倒れ、手術の結果、高次脳機能障害になったという。高校卒業後、50歳の現在まで、某自動車メーカーの工場勤務。今は傷病手当金を貰っている。くも膜下は、脳の病気だが、高次脳機能障害は、精神の病気になるのだろうか。経過を話す奥さんの隣にいる夫は、もはや子供そのもの。時には、暴れるときもあるという夫を、妻は見守る。
 「車に乗れなくなって、大好きな車なのに・・・」と泣き出さんばかりの夫は、奥さんにとっては大きな子供、ひときわ手のかかる子供と言うしかない。
 

外国人の年金

 このごろ外国人がらみの年金相談づいている。日本人の夫が急死して、遺族年金を貰うことになったタイ人女性。フィリピーノに入れあげている夫に愛想をつかした日本人妻からの年金分割相談(これは夫が共済組合だったので、年金額を計算できなかった)。そして日本人と結婚しているポーランド人女性。
 このポーランド人は、永住権をもっているが、これから何年払えばいくら出るのかと言う質問。永住権があれば、いろいろカラ期間も使えるので、とりあえず60歳まで払うようにと答える。今一時金で貰ってしまって、あとでポーランドとの間に通算年金制度ができないとも限らないし・・・
 親の看病にポーランドに帰ったりしたら、年金は払えないから、と彼女の夫。でも任意加入で夫が払うこともできるし、収入がない期間は第3号にすれば・・・なんて話し始めたら、彼女の顔がなんだか不満げになった。彼女にとって、夫の扶養に甘んじることはプライドが許さないのだ。こんな女性は、素敵だ。

未成年者の年金保険料

 総務関係のサイトに、高卒者の社会保険料を、給料から差し引いていいのかどうかという質問が出ていた。当然すぎる話だけれど、こういう質問が出ると言うことは、いかに今の時代、中卒・高卒で会社に入る人間が少ないかということなのだろう。
 年金相談をしていると、結構中卒の人が多い。昭和21年生まれの戦後派も、田舎に生まれてしまえば、当たり前のように集団就職で都会の工場に働きにきていたのだろう。社会もそれを受け止めて、中卒でもまじめに働けば報われるシステムを作ってきた。いわゆる現場のたたき上げと言うシステム。中卒でも管理職になり、なかには役員にだってなれたシステム。今は、それを壊すことが企業の生き残りの必須アイテムみたいに言われているが、結構いいシステムなんじゃないかと思う。
 中卒でまじめに働き続けた人には、年金も優しい。44年間厚生年金に加入し続けた長期加入者は、定額部分が60歳からついてくる。もっともこれは、退職していることが条件。在職していれば、他の人同様の受給方法になり、在職老齢年金として給料と、年金の調整がなされる。さらに、高年齢雇用継続給付金が支給されると、さらに年金の至急停止額は増える。「働いても報われない」と、高齢者の不満は大きい。