相談にのれない事

 来月60歳定年を迎える夫と、一回り年下の妻。子供は、15歳の高校生。直前になって年金額を調べに来た。報酬比例分で、月額5万に届かない。再雇用の月給は、25万円の予定。在職老齢年金の仕組みを教え、実際に計算すると、い年前の賞与のせいで年金は出ないことがわかった。「何で1年前の賞与が問題になるのか」といわれても、賞与は予定できるものではないからと言うぐらいしかできない。「こんなんじゃ暮らせない」と言われても答えようがない。「まだ子供の学費もかかるし、年よりもいるし、家のローンもある」と窮状を訴えられても、私にはどうしてあげることもできない。『再雇用をやめて、今の給料をくれるところを探そうか」と夫。「60歳すぎて45万で新規採用なんて無理です」というのが精一杯。「私は、あなたがどれほどのキャリアを持ち、どれほどの能力があるのかを知らないから、正確なことはいえないけれど、一般的に言えば、60歳からの求職活動は大変だし、無職になるよりは25万でも貰ったほうがいいのではありませんか」と。
 奥さんのほうは「退職金が普通に出れば、それを取り崩して・・・」と言い出す。この奥さんは、大企業並みに2千万ぐらい出るものと思っているようだ。「中小企業だと、せいぜい中退共から数百万ぐらいかな」というと、顔色が変わった。夫は「2か月分だよ」と言い出す。奥さんの顔が凍りつく。
 賞与の影響で年金が出ないのは1年間だけで、あとは少しは出るのだから、とりあえずこの1年間だけは、月給を3万円ぐらい上げてもらうように会社と交渉してみては・・・ということで帰ってもらった。
 もう少し早く気づいて、退職後の生活を計画しておかなくては。自己責任・自助努力なんて言葉が頭に浮かんだ。「奥さんも働いているんでしょう」と遠まわしに聞いてみたが、あの奥さんは、自分がフルに働いて生活を助けようなんて気はなさそうだし、生活が厳しくなるということを教えるところまでが私の仕事だから、これ以上は踏み込めません。