富の再分配

 社会保障には、富の再分配機能がある。何千万の年収を稼ぐ人も、中卒でこつこつ働いてきた人も、年金額では大差が出ない。うそだと思ったら、自分で計算してみるといい。標準報酬月額(今は総報酬月額相当分というのかな)で、厚生年金の上限額が決まっているから、昭和21年生まれの、今年60歳になる人たちは300万円を超えることは、まずないはずだ。企業年金や、職域加算、配偶者加算等がついて初めて300万円を超える。「たったこれだけ?」と叫んだ、某有名企業の退職者もいたけど、「退職金もあるし、貯金もあるでしょう」と答えるしかない。中卒で金の卵で働いてきた人たちは、終身雇用の中で守られてきた時代が長いから、それなりに賃金も上げてもらい、職位も上げてもらって、そこそこの年金が得られる。何より長期加入者の特例で、定額部分を60歳からもらえるのだから(ということは60歳から配偶者加給がつくということ)、かなりお得になっている。中卒もエリートも、老後は変わらない収入というのが面白い。
 とはいえ今の若い人たちは、こんな特典も与えられず、長期雇用の道も示されず、とにかく自分の老後は自分で守るしかない。女性も専業主婦に甘んじることはできない。なぜなら、配偶者加給なんて、あと数年でなくなってしまうし、税制上の特典もなくなれば、自分で働いて自分の年金を作るしかないのだ。平成20年から第3号と第2号の年金分割が始まるが、一人分の年金を分けるより、1.5人分、あるいは2人分の年金を分けるほうが有利に決まってる。
 国から守られないというのは、それだけ自立が要求されるということだ。これはある意味、日本女性にとっては、好機かもしれない。安穏と生きて、夫に守ってもらおうなんて時代は終わりつつあるのです。