判例ノート     ①安全配慮義務

業務災害・職業病の発生について使用者側に帰責事由があるとき、被災労働者・遺族は、使用者に対して損害賠償を請求できる。
1.不法行為民法709条等)を根拠とする請求
2.債務不履行民法714条使用者責任)を根拠とする請求
現在は2によることが一般的。
<留意点>
使用者が負う安全配慮義務の具体的内容を特定し、かつ義務違反に該当する事実を主張・証明する責任は、被災労働者・遺族側にある。
使用者が、社会通念に照らして相当と評価される措置を講じていれば、結果回避義務に欠けるところなく、安全義務違反は成立しない。
損害賠償責任を問うには、使用者の債務不履行の事実と労働者に生じた損害との間の相当因果関係の存在が必要である。
安全配慮義務に基づく損害賠償債務は期限のない債務なので、遅延損害金の起算日は、被災労働者側から使用者が履行の請求をうけた日の翌日。
安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は10年。

労働者への安全配慮義務は、健康配慮義務、セクハラに関して職場環境配慮義務に敷衍できる。